こんにちは、花を愛でるコテツです。
こちらの記事では、花の購入に関する調査結果をもとにした消費動向・購入層の分析を通して、「誰が何のためにどんな花を買うのか？」を明らかにします。
「やはり野に置け蓮華草」で野の花は野が似合います。いっぽうで花屋さんの店先を彩る切り花は人が手を加えて生み出した芸術作品、愛でる人がいてこその花です。
一輪の花が暮らしの中にあるのとないのとでは気持ちが全く違います。花サブスクの記事を書いたので、コテツの同好の士について調べてみることにしました。
購入調査に見る花の消費動向
農林水産省による「花きの現状調査」は、花きの生産・流通・消費に関するさまざまな統計調査や関連データの総称です。花き行政の施策立案や生産・消費拡大の基礎資料として活用されます。
2024年度にも農林水産省の資金提供を受けて、花の購入に関する複数の調査が実施されています。
これらの調査は主に国産花き生産流通強化推進協議会が実施したものです。消費者の購買行動や小売市場の動向を詳細に分析しています。
その中でも主に「花の消費選好調査」・「花店利用者調査」をもとに記事を書きました。
「花の消費選好調査」とは
この調査は、2024年における消費者の花や植物の購買行動を分析したものです。
調査項目には、花や植物の購入率・用途別購入率・購入頻度・購入経路（チャネル）などが含まれています。
主な分析内容は、消費者の購買行動の変化・特に家計防衛意識の高まりが花の消費行動に与える影響です。
「花店利用者調査」とは
花小売業者の顧客の購買行動と評価に焦点を当てた調査です。
大手花小売店（日比谷花壇・青山フラワーマーケット・イオン）の顧客が対象となりました。
「物流負荷低減に資する川下ニーズ」がテーマです。ここでいう川下とは消費者。
花きのサイズや用途ごとの利用実態が調べられています。
最近の花き消費動向の傾向
近年の花き消費は、長期的な減少傾向にあります。
一方で、ここ数年需要構造に変化が見られ、オンライン販売や家庭用需要が拡大しています。
消費量と市場規模
長期的な減少傾向: 日本の1世帯あたりの年間花き購入額は1997年のピーク時と比較して2022年には約32%減少しており、背景として人口減少・高齢化・若年層の「花離れ」などが挙げられる。
市場規模の鈍化: 2024年における花・植木小売業者の売上高はわずかながら減っており、業界全体としては成長の鈍化が見らる
世界市場との比較: 日本の切り花の一人当たり消費額は、スイスなど花き消費が活発な国々と比べると低水準にとどまっている
外出自粛がもたらした変化
家庭用需要の増加: 冠婚葬祭などのイベント需要が減少する一方、外出自粛により「おうち時間」が増加したことで、家庭内で花を楽しむカジュアルな消費が増えた
オンライン販売の普及: 外出自粛により、オンラインでの花き販売や定期購入サービス（花のサブスク）が普及
ギフト需要の拡大: 外出自粛による消費行動の変化が、新規顧客層の獲得につながったとの調査もある
販売経路と消費行動の多様化
オンライン販売の成長: ECサイトやサブスクリプションサービスの普及により、オンラインでの花き購入が一般的になった
小売店の多様化: ディスカウントストアでの園芸用品購入が増えるなど、消費者は手ごろな価格の花きを求める傾向にある
贈答用と家庭用の二極化: 冠婚葬祭などの業務用需要が減少する一方、店頭での家庭用消費が増え、高級品を求める層と手ごろな価格を求める層に分かれている
廃棄を減らす取組: フラワーロス（花の廃棄）問題への関心が高まり、産地直送やオンライン販売を通じて廃棄を減らす活動が普及
若者の花離れとその理由
若者の花離れを示す複数の調査結果があります。その中から3つ取り上げてみましょう。
〇農林水産省『花きの現状について』（2020年）の調査報告書によると、2000年と比較して、2019年の20代・30代の年間切り花購入金額は半分以下に減少しています。
2019年における、2人以上の世帯の年間購入金額（8,401円）に対し、20代はわずか716円、30代でも2,124円と、他の世代と比べて非常に低い水準にとどまっています。
〇オークネット総合研究所『花の購入に関する消費者意識調査』（2020年）によると、20代〜40代は、「自宅に飾る」目的で花を購入する割合が、60代女性の半分以下という結果が出ています。
20代〜40代の男性では約半数、女性でも3割以上が「花や緑に興味がない」と回答しており、花への関心の低さが示されています。
〇会津大学短期大学部『若者の花卉に対する消費意欲とその決定要因』（2023年）によれば、学生を対象とした調査で、「所得の低さ」や「心理的な不安要素（すぐに枯れてしまう、どう扱えばいいか分からないなど）」が、若者の花卉（かき）購入を妨げる要因であることが示されています。
上記の調査やその他の分析から、若者が花を買わなくなった背景として、以下の要因が挙げられています。
経済的な負担: 「価格が高い」という認識があり、特に所得が低い若年層にとっては購入の優先順位が低くなりがち
日持ちへの不満: 「すぐに枯れてしまう」というイメージが根強く、コストパフォーマンスの悪さを感じさせている
購買行動への不安: 「買い方がわからない」「店員に話しかけにくい」といった心理的なハードルも影響している
花のイメージの変化: 花を贈答品として捉える風潮が強く、普段の生活に取り入れるという習慣が希薄である
購入調査に見る花の購入層分析
花の消費動向は、地域や年齢層によって異なります。ここでは、年齢層別の購入者についてその傾向を見ていきましょう。
年齢層別の花購入者
農林水産省による花きの消費動向調査（2020年度）などから、花を購入する年齢層は、若年層では購入率が低いものの、中高年層、特に女性の購入率が高い傾向にあることがわかります。
年齢層別の花購入の傾向
〇高齢層（60代）
・購入率が高い: 60代の購入率は他の年代に比べて顕著に高く女性では特にその傾向が強い
・用途: 自宅に花を飾る意欲が高く「花や緑を育てる（園芸）」にも関心が高い
・特徴: 昔ながらの花や品質の良い花を好む傾向
〇中年層（40代・50代）
・購入率: 20〜40代全体では60代に比べて購入率が半分以下だが40代女性や50代女性では上昇傾向が見られる年もある
・用途: 贈答用としての購入ニーズが高いほか高品質な花や安心できるブランドを重視する傾向
〇若年層（20代・30代）
・購入率が低い: 20〜40代の購入率は60代に比べて半分以下で特に20代男性の購入率は低い
・上昇傾向: 20代男女と40代男性、50代女性では、前年比で花の購入率が上昇したという調査結果もある
・用途: 自分へのご褒美やおしゃれでSNS映えする花を求める傾向がある
近年の変化（2020年以降）
以前は業務用の比率が高かった切り花の消費は、家庭用需要の店頭販売が増加傾向にあります。
2019年から2021年にかけて、29歳以下の年齢層で年間切り花購入額が約2倍に増加しました。また、30〜39歳の層も増加傾向にあります。
60代、70代の層は引き続き主要な購入者層であるものの、年間の花への支出額は減少傾向です。
これらのデータから、若年層の新規顧客獲得や既存顧客である高齢層の消費維持が、花き業界の課題となっていることがわかります。
花の男女別購入傾向
農林水産省が実施した花きに関する消費者調査によると、花を購入する男女の間には、購入目的・価格帯・興味の度合いなどに明確な違いが見られます。
＜女性＞
・購入目的： 自宅に飾るためとプレゼントの両方に積極的
・購買頻度： 男性に比べて花を自宅に飾る頻度が高い傾向
・購入価格帯： プレゼント用の花について3,000円程度のやや高価格帯でも気軽に購入すると回答する割合が高い
・花の興味度： 男性よりも花や緑に興味がある人の割合が多く若年層でも男性に比べて高い
＜男性＞
・購入目的： 「贈る」目的での購入が中心で特にバレンタインデーなどのイベント需要に左右される傾向
・購買頻度： 花の購入頻度は女性に比べて低く自宅用に頻繁に花を飾る習慣のある人は少ない
・購入価格帯： プレゼント用の花について2,000円程度の比較的安価なものを気軽に購入すると回答する割合が高い
・花の興味度： 20〜40代の男性は特に花や緑に「興味がない」と回答する割合が女性より大幅に高い
このように、女性は日々の生活を彩るために花を購入する傾向がある一方、男性は「プレゼントを贈る」という特別な目的での購入が中心です。
また、女性は男性よりも高い価格帯の花でも抵抗なく購入する傾向があることがわかります。
特別な日と花の需要
花店利用者調査による、2023〜2024年の1年間（≒2023年）に花を購入した日を見てみましょう。代表的な企業別に物日（ものび）の利用集中状況について調べたものです。
物日 (ものび)とは、春と秋のお彼岸やお盆、正月など、特定の行事や季節に需要が特に高まる日のことを指します。 特に切り花の需要が増えるため、これらの時期を狙って出荷・販売が行われます。
フラワーバレンタインの購入者は、日比谷花壇利用者の13%・青山フラワーマーケット10%です。
日比谷花壇は母の日（50%）をはじめ、特別な日に人気が高いことがわかります。
青山フラワーマーケットは同じく好調です。しかもそれ以外のカジュアルギフトやホームユースなど「その他の日」でも売れています。
盆・彼岸の利用が目立つのがイオンです。
※ここでいう購入率は、各店の最近1年以内の利用者（20〜50代）のなかで、それぞれの物日に購入した人の比率であることに注意。市場での一般的な「購入率」とは異なる。また、女性や自宅用ユーザーの比重が厚い店では、特に男性のギフト利用が多い物日の購入率は、相対的に低くみえる。
［出典：青木恭子（2024）「花店利用者調査」国産花き生産流通強化推進協議会］
なお、次の図表は、花を買った「日」を性別年齢別にあらわしたものです。
人気が高い花
調査時期や対象によって順位は変動しますが、全般的に人気が高いのは桜とバラです。
以下のような花が上位にランクインしています。
・桜: 日本人にとって最もなじみのある花として圧倒的な人気を誇る国花
・バラ: 世代を問わず人気が高くプレゼントとしても需要が高い
・チューリップ: 年代別の調査でも上位に挙がることが多い春を代表する花
・ひまわり: 特に若い世代からの人気が高い夏を象徴する花
・キンモクセイ: 甘い香りが特徴で秋の人気ランキングで上位に入ることもある
・コスモス: 秋を代表する花として多くの人に好まれている
また、農林水産省の調査によると、国内での切り花出荷量で特に多いのはキク・バラ・カーネーションです。
キクは、近年では品種改良により色や形が多様化し、仏花としてだけでなく日常でも親しまれています。
ギフトシーンでは、花言葉や季節感も重視されます。
愛情を伝えるバラ・母の日の定番カーネーション・フォーマルな場面でのギフト胡蝶蘭・希望や感謝を伝える花ガーベラが人気です。
花を購入する目的と買わない理由
何のために花を買うのか、これはある程度想像できますね。花を購入する目的はさまざまです。
一方、花を全くあるいはほとんど買わないのはなぜなのか、調査結果からひもといてみましょう。
花の購入目的
農林水産省の調査によると、花の購入目的は「仏花のため」（67%）・「自宅に飾るため」（63%）が上位を占めています。
切り花購入者のうち半数は仏花・お供え用として花を購入していることがわかります。
特に60代以上の購入目的では「仏花」が最も高い割合を占めており、これは確かにうなずけることです。
購入者の回答から見る買わない理由
消費者調査から、花を買わない主な理由として次のような点が明らかになっています。
価格が高い: 価格が購入の障壁となっているという回答は多い
日持ちがしない: 「すぐ枯れてしまうのが嫌だ」という理由も上位に挙げられており店頭での管理が悪く鮮度が落ちていることへの不満も指摘されている
品質への不満: 単純な価格の安さよりも品質を重視する消費者が多い傾向にある
手入れが面倒: 水替えなどの管理を面倒に感じる消費者が多い
育て方・管理方法がわからない: 花に関する知識が不足しているため手入れに自信がないことが買わない理由につながっている
生活様式の変化: 近年のライフスタイルの変化により花を飾る機会や習慣が減少している
若い世代の花離れ: 若年層を中心に「花に興味はあるが生活に取り入れていない」という層が存在
情報不足: 花の管理方法や品種に関する知識をどこで得れば良いかわからない
これらの調査結果は、鮮度保持技術の向上・手頃な価格帯の商品の提供・消費者への正しい知識の普及が重要であることを示しています。
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花のある暮らしの魅力
農林水産省や関連機関による消費者調査によれば、中高年層の女性が花を最も多く購入しています。また60代男性も他の年代の男性より購入意欲が高い傾向にあることがわかりました。
一方、若者が花を買わない理由として、「価格が高い」「手入れが面倒」「すぐに枯れる」といった経済的・心理的な負担が考えられます。
日常的に花を買う人の主な購入目的は、仏花・自宅に飾るためです。特別に購入する日は母の日・お彼岸が多くなっています。
国内の切り花出荷量で特に多いのはキク・バラ・カーネーション。そのほか人気が高い花としてサクラ・チューリップ・ヒマワリなどおなじみの花々が名を連ねています。
花のある暮らしは、美しく明るい空間と心の豊かさをもたらしてくれます。赤ちゃんを見て笑顔になるように花を見て優しい気持ちになるのは自然の感情ですね。
花一輪のあたたかさ。
