全43巻を制覇!今こどもたちに読ませてほしい福音館古典童話完全ガイド
こんにちは、コテツです。
神田神保町の三省堂書店の再開がニュースになりました。老朽化のため22年に閉店し、建て替え工事を行っていた三省堂本店です。ただし、売り場面積は旧店舗の約6割に縮小され、文具売り場やカフェが設置されます。
書籍もネット通販で入手できる時代になってから、街の本屋さんが次々に閉店していきました。たとえ規模は小さくなっても神保町に三省堂が戻ってくるのは嬉しいニュースです。
少し前のことになりますが、イギリスでは、本屋さんが復活しているという話を聞きました。AIに尋ねてみたところ「独立系書店の数が20年以上にわたる減少傾向から反転しています。過去10年近くで最高水準を維持しています。これは、単なる復活ではなく、書店が社会・文化的なコミュニティ拠点として機能するようになったことや、オンライン疲れの反動などが影響しています。」と。日本にもこの流れが来ている気がします。
本屋さんをこれ以上つぶしてはなりません、日本人なら難なく読める紀伊国屋も檸檬を置いてみたくなる丸善も日本文化の屋台骨です。
というねじり鉢巻き的な長い前置きの後、ぜひとも書店で手に取ってその装丁の美しさとハードカバーのずしりとした重厚感を味わっていただきたい福音館古典童話シリーズ43巻全てをご紹介します。
福音館古典童話シリーズの魅力
福音館古典童話シリーズは、1967年から始まった日本の児童文学叢書で、全43巻の名作が揃っています。
このシリーズの魅力は、原典に忠実な完訳と、初版本の挿絵を可能な限り復刻している点です。
子どもたちにとって、古典文学を身近に感じることができる貴重な機会を提供しています。
また、物語の内容は時代を超えて愛されるものであり、親子で楽しむことができる点も大きな魅力です。
福音館古典童話シリーズとは何か?
「福音館古典童話シリーズ」は、福音館書店が1967年から刊行している世界各国の優れた児童文学の叢書(シリーズ)です。
『トム・ソーヤーの冒険』・『ハイジ』・『宝島』など、時代や国境を越えて愛されている数多くの作品が含まれています。
各巻は、物語の内容だけでなく、挿絵や装丁にもこだわりがあり、視覚的にも楽しめるようになっています。そのため、ただ読むだけでなく、見る楽しさも提供しているのが大きな魅力です。
このシリーズの特徴は以下のとおりです。
▶厳選された名作: 世界中から厳選された古典的な名作を揃えている
▶原書からの全訳: 原書からの全訳を基本方針としており、作品の本来の魅力を伝えている
▶初版本の挿絵を復刻: 原書の初版本などに使われた挿絵を復刻して収録しており、当時の雰囲気を味わうことができる
▶対象年齢: 主に小学校中学年から高学年向けの、読み応えのある内容となっている
▶装丁: A5変形版で、多くが函(はこ)入りという美しい装丁
福音館古典童話シリーズの歴史と背景
出版元の福音館書店は、1916年にカナダ人宣教師が金沢市で創設したキリスト教関連書籍を扱う書店が原点です。その後、日本人経営者に引き継がれ、1950年代から児童書の出版社として歩み始めました。
福音館古典童話シリーズは世界中の優れた児童文学を、原典に忠実な形で日本の読者に紹介することを目的としています。1967年に始まったシリーズ第一弾はジュール・ヴェルヌの『二年間の休暇』でした。
以来、日本の児童文学界を代表するような優れた翻訳家たちが携わっており、質の高い日本語訳を実現しています。
福音館古典童話シリーズは、長年にわたり日本の多くの子どもたちやその親たちに愛され、読み継がれている定番シリーズです。
福音館古典童話シリーズ43巻の紹介
福音館古典童話シリーズの珠玉の名作全43冊を一冊ずつご紹介します。装丁を見ていただきたいのですが、著作権の関係上、直接の撮影ができません。Amazonアソシエイトから画像を取り込みますのでご理解ください。
全巻を制覇するためのガイド
全43巻を制覇するためのアプローチとして、順番に読んでいく以外にも次のような方法が考えられます。
〇 興味のある作品から始めるアプローチ
いきなり全巻読破を目指すのではなく、興味を引くタイトルや馴染みのある作品から読み始めることをお奨めします。例えば、『ふしぎの国のアリス』や『小公女』など、映画やアニメなどで知っている作品から入ると、スムーズにシリーズの世界に入り込めるでしょう。
〇 年代順に読むアプローチ
シリーズには19世紀から20世紀にかけての名作が含まれています。作家の活躍した年代や作品の発表順に読むことで、児童文学の歴史や変遷を感じ取ることができるでしょう。
〇テーマ・ジャンル別アプローチ
冒険もの(『宝島』『ロビンソン・クルーソー』『ガリヴァー旅行記』『西遊記』など):ハラハラドキドキの冒険を楽しめる作品群
ファンタジー(『オズの魔法使い』『ふしぎの国のアリス』など):不思議な世界観に浸れる作品群
日常・成長物語(『若草物語』『ハイジ』『小公女』『トム・ソーヤーの冒険』など):登場人物たちの成長や日常に焦点を当てた作品群
福音館古典童話シリーズ全43巻紹介
装丁をご覧になりたい方はアイコンをクリックするとAmazonに飛びます。あらすじや感想も読めますが、「ネタバレはイヤだ!」という方はクリックせずにコテツの個人的かつイマイチな書評をどうぞ!
1.「ニワトリ号一番のり」(J・メイスフィールド 作 木島 平治郎 訳 寺島 龍一 画)

ニワトリ号一番のり (福音館古典童話シリーズ)
| 最初から大変申し訳ないのですが、ちょっと子どもにはムズカシイ。しかも書名と本の中身がミスマッチ!幼きコテツには意味不明なモヤモヤが残った記憶があります。もちろん訳は素晴らしいので大人はわかるし楽しめる。 |
2.「二年間の休暇」(J・ベルヌ 作 朝倉 剛 訳 太田大八 画)

二年間の休暇 (福音館古典童話シリーズ)
| 日本では「十五少年漂流記」としても知られていますね。これは「ニワトリ号一番のり」と違って、どちらの題名でも内容がわかります。とても少年少女向けに見える題名です。しかし、ロビンソン・クルーソーが愛読書だった幼きコテツにとって、なんだか子ども同士で面倒なことになってる的なストーリーでした。大人目線で読み返してみると、ロビンソンと同じ植民地支配の匂いがします。やはりこれは児童書とはいえ古典なのです。 |
3.「あしながおじさん」(J・ウェブスター 作 坪井郁美 訳)

あしながおじさん (福音館文庫 古典童話)
| 「あしながおじさん」というと、あしなが育英会や子どもたちの支援者を思い浮かべるかもしれません。アニメ世界名作劇場でも「私のあしながおじさん」が放映されさらに有名になりました。幼きコテツは「あしながおじさん」より「小公子」のほうが好きでした。どちらも支援者のおかげで逆境を乗り越えていくサクセスストーリー的展開です。「小公子」で描かれているのは孫に対する祖父の愛情なので共感できました。正直言うと「あしながおじさん」は今でも好きになれないのです。困った。(「個人の感想です」を使おう!) |
4.「ピノッキオのぼうけん」(C.コルローディ 作 安藤 美紀夫 訳 臼井 都 画)

ピノッキオのぼうけん (福音館古典童話シリーズ)
| グリム童話がそうであるようにピノッキオの原作もかなり残酷です。批判を受けやがて結末は改変され、ピノッキオは人間の子どもになれました。それでもディズニー映画とは違い本の中のピノッキオは相当のワルガキです。同じくワルガキだった幼きコテツですが、このピノッキオよりゼペット爺さんにいたく同情しました。サメに吞み込まれたゼペット爺さんと、「聖書物語」の中に出てきた大魚の腹にのまれたヨナを暫く混同していました。どちらもワルガキコテツに人間の善良さを教えてくれた人たちです。 |
5.「ふしぎの国のアリス」(ルイス・キャロル 作 生野幸吉 訳 ジョン・テニエル 画)

ふしぎの国のアリス (福音館古典童話シリーズ)
| 幼きコテツは、文語に抵抗がない子どもでした。それなのにこの「ふしぎの国のアリス」の翻訳になじめず飛ばし読みして終わりました。これは決して生野幸吉(しょうのこうきち)氏のせいではありません。英語の原作そのものがマザーグースの世界。言葉遊びが随所にちりばめられていて、日本の幼子たちには馴染みにくい。しかもストーリは荒唐無稽。アリスは絵しか覚えていません。今なら日本語の美しい文体を味わって読めます。 |
6.「夢を追う子」(W・H・ハドソン 作 西田 実 訳 駒井 哲郎 画)

夢を追う子 (福音館古典童話シリーズ)
| 主人公同様、幼きコテツも蜃気楼を見たことがあります。あいにく水平線の上だったので追いかけはしませんでした。この作品は作者のウィリアム・ヘンリー・ハドスンの少年時代が投影されている気がします。幼きコテツは、巌谷小波の「きのこ大夫」が好きだったのですが、共通する世界観があります。マーチン少年と木之助少年は似ている! |
7.「アーサー王と円卓の騎士」(シドニー・ラニア 編 石井 正之助 訳 N・C・ワイエス 画)

アーサー王と円卓の騎士 (福音館古典童話シリーズ)
| アーサー王の味方だった幼きコテツはランスロットが嫌いでした。大人になってもアーサー王熱は冷めやらず、南西イングランドに残るアーサー王伝説を訪ねて回りました。コーンウォールのティンタジェルや、アーサー王の墓所といわれるグラストンベリー修道院跡。廃墟の中にアーサー王伝説を重ねあわせて深く感動しました。余勢をかって土産物店でちっちゃな「エクスカリバー」を購入。京都で模造刀に惹かれる外国人観光客の気持ちがわかりました。エクスカリバーは今も本棚前面に飾ってあります。この本との出会いは人生を変えました(言ってみたかった!)。 |
8.「ピーター・パンとウェンディ」(J・M・バリー 作 石井桃子 訳 F・D・ベッドフォード 画)

ピーター・パンとウェンディ (福音館古典童話シリーズ)
| ピーター・パンはすでに有名で、幼きコテツが彼を知った日の記憶は全くありません。絵本だったのか映画だったのか。福音館のピーター・パンはディズニーのそれとは別人!石井桃子さんの訳です。これもまた大人のための童話だと思います。 |
9.「さらわれたデービッド」(R・L・スティーブンソン 作 坂井 晴彦 訳 寺島 龍一 画)

さらわれたデービッド (福音館古典童話シリーズ)
| 18世紀のスコットランドが舞台。これぞ心ときめく冒険談、掛け値なしに面白いです。なんといっても作者は、あの「ジキル博士とハイド氏」「宝島」のスティーブンソン。挿絵も素晴らしい。スコットランドは何度も走りましたが荒涼としたハイランドは夏でも冷涼な気候。湖と島々の美しさは絵のようですが、重苦しい歴史を象徴するような山間の土地は寂しい。この物語も当時の政治的背景を抜きには語れません。 |
10.「鏡の国のアリス」(ルイス・キャロル 作 生野 幸吉 訳 ジョン・テニエル 画)

鏡の国のアリス (福音館古典童話シリーズ)
| 柳の下にドジョウが2匹!よく言われることですが、元祖アリスつまり「不思議の国のアリス」より整然としていて読みやすいのは、ルイス・キャロルが2匹目を「狙って」書いたからです。発売と同時に大ヒットして今に至る「鏡の国のアリス」、コテツはこれにもまたどうも食指が動かない。アリスの世界はゴシック的。「トムは真夜中の庭で」のほうがシンプルだけど100倍ひきこまれる。ごめんなさい💦 |
11.「海底二万海里」(J・ベルヌ 作 清水 正和 訳 A・ド・ヌヴィル 画)

海底二万海里 (福音館古典童話シリーズ)
| 幼きコテツが絶対好きなジャンルに違いないタイトル。しかしながら、期待は見事に裏切られ、「二年間の休暇」同様、夢中にはなれない内容でした。興味を引いたのは「海底二万マイル」「海底二万里」そしてこの福音館の「海底二万海里」というタイトルの乱立。同じ混乱を経験したかつての子どもの皆さんは、ネットのない時代、はたして解決に至ったのでしょうか。 |
12.「宝さがしの子どもたち」(E・ネズビット 作 吉田 新一 訳 スーザン・アインツィヒ 画)

宝さがしの子どもたち (福音館古典童話シリーズ)
| 舞台はロンドン。文字通りの宝探しではありません。のび太とドラえもんが考えつきそうなアイデアに力を合わせる、健気な6人姉弟の物語です。イギリスの古き良き児童文学の代表作。どうしてイギリスは児童文学がいいのかなあ。大英帝国の傲慢さとは全く無関係に、あの乾いた空気の島国で優れたユーモアが醸成されたわけを誰か教えてください。 |
13.「ハイジ」(J・シュピーリ 作 矢川 澄子 訳 パウル・ハイ 画)

ハイジ (福音館古典童話シリーズ)
| アニメ「アルプスの少女ハイジ」も含めて、ハイジ=スイス。チーズフォンデュもなが〜いブランコも乾草のベッドも羊飼いのペーターも全てスイスそのもの。多くの日本人がハイジになって満面の笑顔でスイスを訪ねるからパスポートコントロールも愛想がいい。幼きコテツも家出するならスイスと決めていました。今、スイスで暮らしたいかといわれれば、きわめて京都的であることと物価高を理由に断ります。 |
14.「ロビンソン・クルーソー」(D・デフォー 作 坂井晴彦 訳 B・ピカール 画)

ロビンソン・クルーソー (福音館古典童話シリーズ)
| 幼きコテツとロビンソンとの最初の出会いは「ロビンソン漂流記」です。擦り切れるまで読みました。フライデーが金曜日だということを知ったのもこの本です。夏になると毎年目指した無人島。ロビンソン・クルーソーが、いとも簡単に筏を作っているので材料さえあれば自分にもできると思っていました。中学校に上がる前に断念しました。福音館の「ロビンソン・クルーソー」は、フランス語版の挿絵が使われています。本というよりドラマを観ているようです。もう無人島では暮らせない大人になったのがいかにも残念。 |
15.「西遊記(上)」(呉 承恩 作 君島久子 訳 瀬川康男 画)

西遊記(上) (福音館古典童話シリーズ)
16.「西遊記(下)」(呉 承恩 作 君島久子 訳 瀬川康男 画)

西遊記(下) (福音館古典童話シリーズ)
| 「三国志」「水滸伝」「西遊記」が幼きコテツの中国です。漫画とアニメと本の挿絵がごっちゃになって最早どれがどれだか誰が誰だかわからない世界です。「罪と罰」の登場人物が全く覚えられないのと似ている。「西遊記」は、中国にも妖怪がいるんだなあというのが正直な感想でした。時は流れに流れて学生時代に上田秋成を読んだとき「あっ西遊記だ!」と思いました。 |
17.「トム・ソーヤーの冒険」(マーク・トウェイン 作 大塚 勇三 訳 八島太郎 画)

トム・ソーヤーの冒険 (福音館古典童話シリーズ)
| トム・ソーヤーも ハックルベリー・フィンもコテツのなかでは今もミシシッピ川のほとりにツリーハウスを構えて時々冒険に出発する永遠の友だち。トムにもハックにも母親がいません。それでもトムにはポリー叔母さんがいるけれどハックはろくでもない父から逃れ家もありません。幼きコテツがややハックよりだったのはそういう理由からです。マーク・トウェインは実に魅力的な人物だったに違いありません。現代のアメリカは(もちろん日本も)マーク・トウェインの世界を失ってしまった。子どもたちにはせめてこの本の中で出会わせてあげたい。 |
18.「宝島」(R・L・スティーブンソン 作 坂井晴彦 訳 寺島龍一 画)

宝島 (福音館古典童話シリーズ)
| 「宝島」といえば、秘宝 → 海賊 → 帆船 → 冒険と言う連想に全人類を導く代名詞です。スティーブンソンの『Treasure Island』(宝島)はあまりに偉大。宝島を見つけたいと思ったことのない子どもはいないはずですが、今はどうかなあ。 |
19.「三銃士(上)」(A・デュマ 作 朝倉 剛 訳 F・E・ツィエール 画)

三銃士(上) (福音館古典童話シリーズ)
20.「三銃士(下)」(A・デュマ 作 朝倉 剛 訳 F・E・ツィエール 画)

三銃士(下) (福音館古典童話シリーズ)
| ダルタニャン・アトス・アラミス・ポルトス・銃士隊長トレヴィル・リシュリュー枢機卿・刀傷の男ロシュフォール伯爵・ボナシュー夫人・・・今でもすらすら出てくる「三銃士」の登場人物たち。幼きコテツとフランスの出会いがこの一冊に詰まっています。パリでF・E・ツィエールが描いたダルタニャンを探しました。古い路地裏から剣を帯びた髭面の男たちがわらわらと出てきそうな気がしました。名作はどんなに時を経ても古くならないことを教えてくれます。小さなお子さんがいる方は、いつか手に取って読むときが来るまで家のあちこちに「三銃士」を置いておくことを強くおすすめします。 |
21.「神秘の島(上)」(J・ベルヌ 作 清水 正和 訳 J・フェラ 画)

神秘の島(上) (福音館古典童話シリーズ)
22.「神秘の島(下)」(J・ベルヌ 作 清水 正和 訳 J・フェラ 画)

神秘の島(下) (福音館古典童話シリーズ)
| ジュール・ヴェルヌの冒険小説大人版!時は南北戦争の真只中。気球に乗った5人の男たちが太平洋上の無人島に漂着する。こう聞いただけでも、先が読めて楽しい。しかも子どもたちが知恵を集めて・・・というのではなく大人ならではの知識と洞察力を発揮して問題を解決していく科学的冒険小説です。低学年から中学年の子どもは感情移入しづらいかもしれません。大人になったかつての子どもたちのための一冊です。Netflixは現代風にドラマ化しないのかな〜。 |
23.「ジャングル・ブック」(R・キップリング 作 木島 始 訳 石川 勇 画)

ジャングル・ブック (福音館古典童話シリーズ)
| 「ジャングル・ブック」(The Jungle Book)は、1894年に出版された短編小説集です。15編の短編のうち8編はオオカミに育てられた少年モウグリの物語。ディズニーの「ジャングル・ブック」の主人公です。有名になりすぎて、ジャングルジムとジャングルブックをなぜか混同していたコテツの幼少期。インドでオオカミに育てられたといわれた(信憑性が疑われている)アマラとカマラの哀しい話が重なって読み返す気にならない本でもあります。 |
24.「秘密の花園」(F・H・バーネット 作 猪熊 葉子 訳 堀内 誠一 画)

秘密の花園 (福音館古典童話シリーズ)
| 正直に言うと、幼きコテツは「秘密の花園」の題名と表紙の女の子から勝手に「女の子たちが秘密の場所で花を摘んで遊ぶ話」というストーリーを展開し、全く興味が湧きませんでした。長い間手に取ることはなかった「秘密の花園」を初めて読んだとき、深く後悔しました、なんでもっと前に読んでおかなかったのか。さらに大人になった今は別の視点で後悔しています、「あの猪熊 葉子さんの訳ではないか、面白いに決まっているではないか、バカモノ!」です。猪熊 葉子さんには少なくとも200歳くらいまでは長生きして、もっともっと多くの名訳を世に紹介していただきたかった。みなさん、子どもたちにサトクリフを読ませましょう。 |
25.「若草物語」(L・M・オールコット 作 矢川 澄子 訳 T・チューダー 画)

若草物語 (福音館古典童話シリーズ)
| これもまた正直に。幼きコテツの興味関心をあまりひかないあらすじでした。南北戦争時代のアメリカで従軍中の父に代わって母を助け家を守る四姉妹。「赤毛のアン」もそうですが、女の子の共感を得やすい物語じゃないかなあ。このホームドラマ的な感じがドラマ化しやすいのはよくわかります。矢川 澄子さんの訳はさすがに素晴らしいです。 |
26.「ガリヴァー旅行記」(J・スウィフト 作 坂井 晴彦 訳 C・E・ブロック 画)

ガリヴァー旅行記 (福音館古典童話シリーズ)
| 「ガリヴァー旅行記」は奇想天外なストーリーはもちろんのこと挿絵も大きな魅力ですよね。ガリヴァーと聞くだけで誰しも思い浮かべる一枚があるはず。福音館では約100枚の原書の挿絵を完全復刻しています。ぱらぱらめくってみるだけで大人も楽しめる福音館の本領発揮の一冊です。この一冊だけでも福音館古典童話シリーズは黄金の価値。 |
27.「トルストイの民話」(П・トルストイ 作 藤沼 貴 訳 Ъ・ディオードロフ 画)

トルストイの民話 (福音館古典童話シリーズ)
| え?民話ってなに?表紙はおじいさん?というのが大方の子どもたちの正しい反応。もちろん幼きコテツも。「人はなんで生きるか」は大人になってみればさすがはトルストイと思う短編ですが、コテツのお気に入りは「イワンのばか」でした。ばか?馬鹿って言っていいの?イワンがかわいそうだよ!多方面に物議をかもす、なんと衝撃的なタイトルだったことでしょう。なんでもかんでもオブラートで包めばよいと思っている今の世の中に在ってはまことに潔いタイトル。「コテツもばか」。 |
28.「オズの魔法使い」(L・F・バウム 作 渡辺 茂男 訳 W・W・デンスロウ 画)

オズの魔法使い (福音館古典童話シリーズ)
| 魔法使いは反則。魔法使いというだけで子どもたちは引き下がれない。オズの魔法使いは魔法使いシリーズの中でも屈指の人気を誇り、昔からミュージカルや映画にひっぱりだこです。ハリーポッターもこうはいかない。福音館の「オズの魔法使い」はウィリアム・ウォーレス・デンスロウの挿絵124枚の完全復刻版を掲載!この挿絵は世界中の子どもたちの心をわしづかみにして放しません。 |
29.「砂の妖精」(E・ネズビット 作 石井桃子 訳 H・R・ミラー 画)

砂の妖精 (福音館古典童話シリーズ)
| E・ネズビットの作品で石井桃子さんが訳したというだけで、内容は一ミリも知らなくても100%子どもたちに与えるべき本です。児童文学の世界では洋の東西を問わず、母性が輝く。ドクロマークがはためく冒険小説は男性作家の独断場かもしれませんが、それ以外は女性の才能と活躍が目を引きます。そして、これもイギリス、児童文学キングダム。 |
30.「モヒカン族の最後」(J・F・クーパー 作 足立 康 訳 N・C・ワイエス 画)

モヒカン族の最後 (福音館古典童話シリーズ)
| モヒカン族が健在であることを知ったとき、ホッとしたことを覚えています。モヒカン刈りでも知られているネイティブアメリカンです。「モヒカン族の最後」はその分厚さにちょっとしり込みしますが、読み始めたら止まりません、しかも何度読んでも面白い。挿絵は、あのN・C・ワイエスです。しみじみ福音館古典童話シリーズの格調高さを思います。ストーリーも挿絵も超一流がずらりと揃う児童文学として他の追随を許さない。 |
31.「レ・ミゼラブル(上)」(ヴィクトル・ユゴー 作 清水 正和 編・訳 G・ブリヨンほか 画)

レ・ミゼラブル〈上〉 (福音館古典童話シリーズ)
32.「レ・ミゼラブル(下)」(ヴィクトル・ユゴー 作 清水 正和 編・訳 G・ブリヨンほか 画)

レ・ミゼラブル〈下〉 (福音館古典童話シリーズ)
| 「ああ無情」です。ジャンバルジャンです。幼きコテツのフランスは「三銃士」と「レ・ミゼラブル」と「ノートル=ダム・ド・パリ」で完璧に構築されました。初めてパリに着いたとき、まず行ってみたかったのは下水道。それからノートルダム寺院。パリの下水道を歩いてみたいという夢はまだ果たされていません。ジャンバルジャンがコゼットの婚約者マリウスを担いで逃走する下水道です。臨終の床に仰向けに横たわるジャンバルジャンは人の最期の姿を教えてくれました。幼きコテツが大きな影響を受けた作家といえばヴィクトル・ユゴーは三指に入ります。一切れのパンを盗んで投獄されたことに始まる諸々の人間ドラマを超える本に今でも出会うことはありません。 |
33.「アラビアン・ナイト」(ケイト・D・ウィギン、ノラ・A・スミス 編 坂井 晴彦 訳 W・ハーヴェイほか 画)

アラビアン・ナイト (福音館古典童話シリーズ)
| 漁師と魔神/黒島の若い国王の身の上話/アリ・ババと四十人の盗賊の話/アジブ王の物語/アラディンと魔法のランプ/コダダードと兄弟たちの物語/ものいう鳥と歌う木と金色の水/船乗りシンドバッドの物語、以上8話が収録されています。独特の筋立てですが、読みやすい訳と福音館ならではの挿絵の素晴らしさが子どもたちを惹きつけるでしょう。 |
34.「ハックルベリー・フィンの冒険(上)」(マーク・トウェイン 作 大塚 勇三 訳 E・W・ケンブル 画)

ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (福音館古典童話シリーズ)
35.「ハックルベリー・フィンの冒険(下)」(マーク・トウェイン 作 大塚 勇三 訳 E・W・ケンブル 画)

ハックルベリー・フィンの冒険〈下〉 (福音館古典童話シリーズ)
| 「トム・ソーヤの冒険」だけ読むとハックはトムの子分的存在に思えました。それでも幼きコテツはハックのほうに魅力を感じました。そのハックびいきは「ハックルベリー・フィンの冒険」で確定的になります。ハックはトムを超える。トムにはポリー叔母さんがいたので、白人の倫理的規範で育ちます。孤独なハックは弱者の哀しみを知っている。「この物語に主題を見出さんとする者は告訴さるべし。そこに教訓を見出さんとする者は追放さるべし。そこに筋書を見出さんとする者は射殺さるべし」とマーク・トウェインが書いているので、これ以上は言いません。 |
36.「クオ・ヴァディス(上)」(シェンキェヴィッチ 作 吉上 昭三 訳 津田 櫓冬 画)

クオ・ヴァディス〈上〉 (福音館古典童話シリーズ)
37.「クオ・ヴァディス(下)」(シェンキェヴィッチ 作 吉上 昭三 訳 津田 櫓冬 画)

クオ・ヴァディス(下) (福音館古典童話シリーズ)
| 「クォ・ヴァディス(Domine,)quo vadis?」 はラテン語です。「主よ、どこに行かれるのですか( Quo vadis Domine? )」という意味だそうです。この言葉に関しては諸説ありますが、信憑性がないので背景は書きません。「クォ・ヴァディス」は、暴君ネロの治世下のローマを舞台に、信仰の力と希望を描く壮大な歴史ロマンです。 |
38.「冷たい心臓」(ヴィルヘルム・ハウフ 作 乾 侑美子 訳 T・ヴェーバーほか 画)

冷たい心臓 ハウフ童話集 (福音館古典童話シリーズ)
| 夭折の作家ハウフが遺した三つの童話、「隊商」「アレッサンドリアの長老とその奴隷たち」「シュペッサルトの森の宿屋」を一冊にまとめています。グリム兄弟と同時代人ですが、コテツは断然ハウフ派。大きな物語(枠)の中に、複数の短い物語が入れ子構造で組み込まれた枠物語という物語形式です。アラビアンナイトと同じですね。語り物の真骨頂。物語の世界へぐいぐい引き込まれていきます。ハウフ自身も、とても魅力的な若者だったに違いありません。 |
39.「ニルスのふしぎな旅(上)」(セルマ・ラーゲルレーヴ 作 菱木 晃子 訳 ベッティール・リーベック 画)

ニルスのふしぎな旅〈上〉 (福音館古典童話シリーズ)
40.「ニルスのふしぎな旅(下)」(セルマ・ラーゲルレーヴ 作 菱木 晃子 訳 ベッティール・リーベック 画)

ニルスのふしぎな旅〈下〉 (福音館古典童話シリーズ)
| 福音館の「ニルスのふしぎな旅」は、上下で1000ページを超える大作。菱木 晃子さんによっておよそ8年の歳月にわたって訳され、実に魅力的な物語に仕上がっています。名訳ありて名著あり。とくに児童文学の翻訳は、生殺与奪の重みをもちます。NHKで放映されたアニメがDVD化されAmazonでも見ることができますが、本書ではアニメでは描かれていない世界にふれることができます。スウェーデン全土をニルスと一緒に旅しながら日本ではなじみの薄い彼の地の歴史も地理も学ぶことができる、まことに贅沢な本です。 |
41.「小公女」(フランシス・ホジソン・バーネット 作 高楼 方子 訳 エセル・フランクリン・ベッツ 画)

小公女 (福音館古典童話シリーズ)
| 「小公子」と並ぶロングセラー「小公女」も、福音館で高楼 方子さんの名訳を得て新たな命を吹き込まれました。あしながおじさんの少女ジュディや赤毛のアンに抵抗があった幼きコテツですが、なぜか小公女のセーラは仲間として認めていました。コテツが最初に出会った「小公女」は抄訳だったと思われます。高楼 方子さんの描き出すセーラはなお一層の魅力を身につけています。 |
42.「狐物語」(レオポルド・ショヴォー 編・画 山脇 百合子 訳)

狐物語 (福音館古典童話シリーズ)
| 性悪狐ルナールの物語は12世紀後半のフランスで、異なる作者によって長期にわたり書き足されていきました。ルナール狐は日本で言うとカチカチ山の狸に匹敵する悪さかな。この物語の影響でフランス語で「狐」は ルナール(renard)と呼ばれるようになったそうです。レオポルド・ショヴォーはこのルナールの物語を仕立て直し挿絵も手掛けました。福音館が山脇百合子さんによる名訳で届けてくれた格別な一冊です。 |
43.「バンビ」(フェーリクス・ザルテン作/酒寄進一訳/ハンス・ベルトレ画)

バンビ 森に生きる (福音館古典童話シリーズ)
| 幼いころから親しんできたバンビの影響力は計り知れません。初めて奈良公園の鹿を見たとき「おおーっバンビだ!バンビだ!」と叫びました。ディズニーも、あまたの児童文学の例にもれず、愛される動物の頂上に押し上げる役割を果たしています。上田 真而子さんの岩波文庫版も良かった。コテツのなかではバンビは永遠に小鹿です。 |
福音館古典童話は珠玉のシリーズ
福音館古典童話シリーズは、世界の名作を原典に忠実に完訳し、挿絵も初版本を復刻したものが多く収められています。幼い子どもたちだけでなく、かつての子どもたちにも心躍る得がたい体験をさせてくれる貴重な作品ばかりです。
福音館古典童話シリーズは、2025年現在、刊行されているのは43巻です。今後も新たな作品や続刊が期待されています。
全巻制覇という野望を胸におとなもこどもも共に福音館古典童話の世界へ、冒険の旅に出かけませんか。

