こんにちは、コテツです。
夏休み気分が吹き飛ぶ(吹き飛んでよかった)ニュースが飛び込んできました。
動画配信大手Netfix(ネットフリックス)が、2026年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本国内での独占放送権を獲得したと発表しました。
驚愕です。
動画配信の黒船とも呼ばれてきたNetflixに日本のテレビ局は撃沈されました。
WBCファンのテレビ視聴者からすれば暴挙です。
なぜNetfliが反発を覚悟でこのような「暴挙」にうってでたのか?
地上波での放送が終了する中、視聴者はどのように新しい視聴スタイルに適応していくのか?
Netfliがこの独占配信を通じてどのような影響を与えるのか?
野球ファンやスポーツ観戦を楽しむ人々に向けて、今後の展望や期待とともに詳しく解説します。
WBC独占配信とは?
日本野球機構(NPB)は26日、米動画配信大手「Netfix(ネットフリックス)」が来年3月に開催される第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を日本国内で独占配信することに関して、声明を発表しました。
あわせて、読売新聞社もプレスリリースで同様の告知を行いました。
正確を期するために両方の声明を全文掲載します。
日本野球機構(NPB)の声明
日本野球機構(NPB)は、主催者のWBCIから事前に告知を受けていたことを明らかにしています。
以下は声明文です。
本日、NetfixがWORLD BASEBALL CLASSIC INC.(以下「WBCI」といいます)と、2026年3月に開催される「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC」(以下、「本大会」といいます)」の日本国内における独占配信パートナーシップを締結したと発表しました。この契約により、本大会で行われる全47試合が、Netfixでライブおよびオンデマンドで配信されることになります。
本大会の放送・配信に関する権利は主催者であるWBCIが独占的に保有しており、今回の決定についてはWBCIから事前に通告を受けておりました。
井端弘和監督率いる日本代表チーム「侍ジャパン」は、今年11月15日、16日に韓国代表との強化試合を控え、WBC連覇に向け準備を進めています。我々はその活動を全面的にサポートすることに引き続き努めてまいります。
読売新聞社のプレスリリース
読売新聞社はWBC日本ラウンドの運営・進行を担っています。
今回の決定は、その読売新聞社の頭越しになされました。
読売新聞社のプレスリリースをご覧ください。
2026年3月に開催される野球の国・地域別対抗戦「2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™ 」(以下「本大会」といいます)の全試合の生中継は、日本国内においてNetflixが独占配信することになりました。
本大会はWORLD BASEBALL CLASSIC INC.(以下「WBCI」といいます)が主催し、当社はWBCIとともに本大会 1 次ラウンド東京プール(於:東京ドーム)計10試合の主催者として各試合の運営・興行を担っています。
前回2023年のWBC1次ラウンド東京プールの試合中継は、WBCIが当社を通じ、国内の複数の民間放送局及び海外の配信事業者に放送・配信権を付与し、地上波の番組での生中継が実現されました。しかし、本大会では、WBCIが当社を通さずに直接Netflixに対し、東京プールを含む全試合について、日本国内での放送・配信権を付与しました。
WBCは、世界一流の野球選手がナショナルフラッグを背負って世界一を目指す特別なイベントであり、野球ファンに限らず内外の多くの方々を魅了する貴重な国際大会です。当社は今後も東京プールの主催者として、多くの方々に本大会を楽しんでいただけるよう引き続き努めてまいります。
なお、NHK及び民間放送各局は、報道目的での試合映像は放映できますので、テレビニュースでは従来どおり試合のハイライトをご覧いただけます。
ご理解を賜りますよう、お願い申し上げます。
WBCの主催者WBCIとは?
ワールド・ベースボール・クラシック(英: World Baseball Classic、略称:WBC)の主催者は、ワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)です。
アメリカのメジャーリーグベースボール(MLB)機構とMLB選手会により立ち上げられた組織を指します。
WBCはWBCIによって行われる野球の国・地域別対抗戦です。
今回NetflixはWBCIと直接交渉し、放映権料を支払うことによって独占契約を結んだことになります。
アメリカの企業が、日本で行われる日本戦を地上波から取り上げた形になったわけです。
ネットフリックスがWBCを独占配信する理由
東京ドームでの日本大会を運営する読売新聞社ですら知らされていなかった独占配信。
報道各社は敏感に反応し、なぜ独占配信に至ったのかさまざまな見解を発信しています。
考えられる主な理由は次のとおりです。
〇地上波テレビの視聴者を取り込む
Netflixは、2025年初頭に世界全体の有料会員数が3億人を超え、日本国内の会員数も1000万人を突破しました。
Netflixは利用者の年齢層に関する公開された公式アンケート結果を提示していません。
広告代理店の調査データやサービス利用者の情報から、10代〜30代の若年層が多く、全体では女性がやや多い傾向があると推測できます。
例えば「株式会社 産案」の調査データによると、Netflix利用者の約57%が18〜34歳の若年層で、50代以上の利用者は16%です。
一方、日本のテレビ視聴者は、高齢層で高く、若年層で低い傾向があります。
特に60代以上の視聴率が高く、シニア層は毎日テレビを視聴する人が多数派です。
昭和世代で野球熱も高いシニア層を、WBCをきっかけに取り込むことも狙いの一つかもしれません。
〇スポーツライブ配信を看板コンテンツにする
Netflixは、世界最大のプロレス団体ワールド・レスリング・エンターテインメント(WWE)の主力番組の配信を皮切りにスポーツ中継に本格参入しました。
さらにNetflixの独占配信F1のドキュメンタリーシリーズ『Formula 1: 栄光のグランプリ』だけではなく、F1放映権そのものの獲得に動いているという報道もあります。
固定ファンが多いスポーツのラインアップを拡充し、ドラマだけではなくスポーツライブも看板にしようという戦略でしょう。
今回のWBC独占放映権は、その戦略を裏付けるものだといえます。
〇広告ビジネスの増収を図る
NetflixがWBCの独占配信権を獲得したことは、広告収益拡大の重要な戦略であり、特にスポーツ中継を原動力とする広告ビジネスの「本命」とみなされています。
その背景を見ていきましょう。
ICT総研の調査によれば、Amazonプライム・ビデオ利用者のうち7割以上が「広告付きプラン」を利用、Netflix利用者のうち過半数が広告付きプランを選択しています。
広告付きの低価格プランを導入し、月額料金を抑えたい加入者層を取り込むことで、広告収益の増加と加入者数の拡大を図っているといえるでしょう。
とくに広告主に対しては、視聴者の視聴傾向・地域・年齢層などのデータを活用することで、高精度なターゲティングと効果的な広告配信を実現しています。
さらにNetflixは、2026年からの生成AIによるパーソナライズ広告の導入を目指す予定です。
個々の視聴者に合わせたリアルタイムな広告を生成することで、広告の関心度と効果を高めることを目指しています。
このように広告収益の拡大を狙うNetflixにとって、WBCは絶好のビジネスチャンスなのです。
WBC地上波終了の影響と新たな時代の到来
地上波でのWBC放送が終了することは、視聴者にとって大きな変化を意味します。
これまで多くの人が地上波で試合を観戦してきましたが、今後はネットフリックスを通じての視聴が主流となります。
前回の2023年WBC第5回大会では、決勝当日の午前中に生放送したテレビ朝日が「全国で推計5463万9000人が視聴」と発表しました。
大谷翔平選手の活躍も相まって40%超の高視聴率を記録しています。
しかし、地上波で見られないとなると、これだけの視聴者数が維持できるのかは疑問です。
そんなにしてまで見ない、あるいは見たくないという人が一定数いるでしょう。
また、街中でも流れているテレビに映るからこそWBCの熱気が拡散していった側面もあります。
子どももお年寄りも気軽に楽しめるのがテレビの良さです。
サッカーより野球ファンが多い日本で、地上波を停止することが吉と出るか凶と出るか、次回のWBCが試金石となるでしょう。
但し、放映権が高騰する一方の現状では、テレビ局が放映しようと思ってもCMだけではやっていけなくなっていることも確かです。
前回のWBC放映権料は約30億円だったといわれています。
Netflixは今回の放映権料を非公開としていますが、前回を大きく上回る50億円程度とみる報道も飛び込んできました。
これからはスポーツの生中継はテレビでは見られない時代が来るのかもしれませんね。
ネットフリックスの独占配信が意味すること
ネットフリックスのWBC独占配信は、単なる放送権の獲得にとどまらず、視聴者に新たな選択を迫るものです。
テレビ離れが進む中、ネット配信サービスがどのように進化していくのか、視聴者にとってプラスなのかマイナスなのか、当分目が離せません。
アマプラ・地上波から放映権を奪う?
2025年現在、有料動画サービスの利用率はAmazon Prime Videoが66.2%でトップ、Netflixが36%で2位となっています。(ICT総研調べ)
Amazon Prime VideoとNetflixは配信サービスのツートップ、ライバルです。(「Amazon Prime VideoとNetflixどっちがいい?AIの答えは優秀だけど」)
スポーツ配信の分野では、Amazonプライムビデオが一歩先んじています。
23年のWBC第5回大会では、プライムビデオのネット配信で中継され、地上波でも放送されました。
いわばアマプラと地上波が共存した形です。
今回はアマプラはもちろん地上波も駆逐されました。
競争の激しいビジネスの世界です。
ネットフリックスを利用するメリット
Netflixを利用するメリットを考えてみましょう。
どんなデバイスでも視聴できるので、いつでもどこでも見ることができるのが最大のメリットかもしれません。
また、次の3つのアピールがXのNetflix Japan公式アカウントに挙げられています。
◆全47試合独占生配信
◆オンデマンド視聴も可能
◆独自コンテンツの配信など、大会を盛り上げる企画も実施予定
Netflixが、試合の同時視聴イベントなどを企画していくかもしれないということですね。
得意とするWBCに関連したドキュメンタリーの作成なども楽しめるのではないでしょうか。
ネトフリWBC独占放映に対する反応
Netflix Japanの公式アカウントに掲載されているMLB Japanの広告に対して、8月27日現在で900を超えるリプライがあります。
NetflixのWBC独占配信への批判
手厳しい批判が多数投稿されています。
さかのぼって読みましたが、批判しかないと言っても過言ではありません。
最新のリプライから順にご紹介します。
・病院に入院してる方、介護施設に入居されてる方、児童施設にいる子供…SVODを観れない環境の人達にはWBCは届かない。野球の裾野を広げるのがWBCの役割なのに残念ですね。
・せっかくの盛り上がりぶち壊してて草すら生えない。地上波やらないとかというより、めちゃくちゃ色んなプラットフォームで見れることにして色んな層から盛り上がらせて欲しかった。独占配信という1番最低な着地点になったな。
・NPBはもうWBCに選手出さないでいいよマジでそれくらいしないとダメ。地上波放送ないなら選手出す価値はないんだから
・野球に興味はないけど大谷翔平が好きだからってBSでMLB中継観てる年寄りが多いんだけど、そういう人はネトフリ加入してまで見ないよ。
・「誰でも野球に親しんで欲しいから」と大谷が安くない金払って全国の小学校にグローブ配ったのに肝心のその大谷が出る国際大会は貧乏人お断り、高くないんだからそんな安いサブスクすら入れないなら野球観る権利もあげませんって訳だ 凄まじいな
ある程度の反発は予想されたかもしれませんが、予想を超える怒りが渦巻いています。
それほど、日本人にとって、特に今この厳しい世相を懸命に生きている日本人にとって、いろいろな意味で感情を逆なでされるようなニュースだったと思います。
無料配信への期待
ネット上にはNetflixの続報に期待する声もあります。
いわゆる無料配信です。
2022年FIFAワールドカップがABEMAで全試合無料生中継されたことを考えると、あり得ない選択ではないかもしれませんね。
大会スポンサーが懸念を表明!
WBCの東京プールの大会メインスポンサーを務めるディップ株式会社が9月2日、X(旧Twitter)でNetflixの独占配信に対する懸念を表明しました。
ディップ株式会社(dip Corporation)は、東京都港区に本社を置く日本のウェブサービス企業です。
以下に、ディップ株式会社の公式アカウントによる投稿を引用します。
【WBC放送・配信権に関する見解】
ディップ株式会社は、WBCの放送・配信権について、懸念を表明します。
今回の放送形態では多くの人々のWBCを気軽に楽しむ機会が奪われてしまうのではないかと危惧しています。
より多くの人々に感動を届けるため、今回のような国民的なスポーツイベントは広くあまねく視聴出来る環境を準備するべきだと考えます。
大会のメインスポンサーのこのような公式見解は、今後の動向に大きく影響する可能性がありますね。
ネットフリックスWBC放映権独占は転換点
テレビを見なくなったとはいえ、野球観戦は甲子園もプロ野球も地上波です。
ふだんテレビを見ないクセにというお小言は通用しません、こと野球に関しては。
「巨人大鵬卵焼き」(誰が知ってるんだぁ〜)の世代はまだテレビの前で一所懸命野球を見ています。
その子も孫もプロ野球のどこかのファンで、春と夏の甲子園は国民的行事です。
こんな日本で降って湧いた「WBC大谷も活躍するけどテレビでは見られないぞ!」という事態はゆゆしき一大事、お金の問題だけではありません。
しかし時代はすでに配信サービスへ舵を切っているのは確かです。
この度のNetflixのビジネスが適切な着地点を見つけてくれることを願うばかりです。
ちなみに巨人戦だけはAmazonプライムビデオで全試合無料配信されています。